(その2)ある国では人々は生まれてくる子には男の子だけを欲しがりました。そのため、どの家族も男の子を産むまで子供を作り続けました。この国では男の子と女の子の人口比率はどうなりますか?

昨日はnが無限大にいくなんて考えてしまった。
nは何人目までにすべての夫婦が男の子を産んだか、だ。
いろいろなnが意味するところを列挙すると、


n=1ならすべての夫婦が1人目で男の子を産んだ。
n=2ならすべての夫婦が2人目までに男の子を産んだ。
n=10ならすべての夫婦が10人目までに男の子を産んだ。


nが1や2で収まることは少ないだろう。
nが10だとほとんどの場合十分だろう。
nがどれだけ大きくなれるかは分からない。
けれど、すべての夫婦を含むことのできる正の整数nは存在するはずである。


昨日の問題をまとめる。


問題)ある国では人々は生まれてくる子には男の子だけを欲しがりました。そのため、どの家族も男の子を産むまで子供を作り続けました。この国では男の子と女の子の人口比率はどうなりますか?


解法)まず昨日と同じく、

簡便のため産まれてくる子供は男女比1:1であるとする。
夫婦は何人目の子供でやめるかを選択する。
夫婦は男の子が産まれた時点で子供を作るのをやめる。
男の子をM、女の子をFと表す。
たとえば女の子3人男の子1人のきょうだいならFFFMと表す。


1人目で男の子が産まれた場合(M) これが起こる確率は1/2
2人目で男の子が産まれた場合(FM) これが起こる確率は1/4
3人目で男の子が産まれた場合(FFM)これが起こる確率は1/8

             ・・・

n人目で男の子が産まれた場合(FF...M)この場合の確率は1/(2^n)


男の子と女の子、それぞれが産まれる期待値を計算してみる。

男の子 1×1/2+1×1/4+1×1/8・・・+1×1/(2^n)

女の子     1×1/4+2×1/8・・・+(n-1)×1/(2^n)

ここで、


男の子の期待値 ― 女の子の期待値 > 0


が成り立てば、性比は男の子に偏るといえる。


ここまでは昨日と同じ。
ここからが今日の答え。

男の子の期待値 ― 女の子の期待値 = D とおく。


D ={1×1/2+1×1/4+1×1/8・・・+1×1/(2^n)}
   -{1×1/4+2×1/8・・・+(n-1)×1/(2^n)}
 =1×1/2+(1-1)×1/4+(1-2)×1/8+・・・+{1-(n-1)}×1/(2^n)
 =1×1/2+0×1/4-1×1/8+・・・+(2-n)×1/(2^n)


両辺に2^nを掛けて分母を払う


2^n×D = 1×2^(n-1)+0×2^(n-2)-1×2^(n-3)+・・・+(2-n)×2^0 (式A)


さらに両辺に2を掛けてみる


2^n×2×D = 1×2^(n)+0×2^(n-1)-1×2^(n-2)+・・・+(2-n)×2^1 (式B)


式AとBの差をとる、つまり式B - 式A

(左辺)= 2^n×2×D - 2^n×D
    = 2^n×D
(右辺)= 1×2^(n)+0×2^(n-1)-1×2^(n-2)+・・・+(2-n)×2^1
     -{       1×2^(n-1)+0×2^(n-2)+・・・+(3-n)×2^1+(2-n)×2^0}

    =1×2^(n)-1×2^(n-1)-1×2^(n-2)-1×2^(n-3)+・・・-1×2^1-(2-n)×2^0


ということはかなり簡単になって、
    = 2^n - 2^(n-1) - 2^(n-2) - 2^(n-3) - ・・・ - 2^1 - (2-n)


2の階乗のマイナス部分をまとめちゃって、
    = 2^n - (2-n) - {2^(n-1)+2^(n-2)+2^(n-3)・・・+2^1}


ここでよくわからないのが{2^(n-1)+2^(n-2)+2^(n-3)+・・・+2^1}の部分。これをAとおく。
そして2Aを計算してみる。


2A = 2^n+2^(n-1)+2^(n-2)+・・・+2^2

2A-A = 2^n+2^(n-1)+2^(n-2)+2^(n-3)+・・・+2^2
     -{ 2^(n-1)+2^(n-2)+2^(n-3)+・・・+2^2+2^1}
     =2^n - 2


ということで、
A = 2^n - 2
ってこれ、等比数列の和の公式の導出そのままですが。


さてDに戻って、
2^n×D = 2^n - (2-n) - {2^(n-1)+2^(n-2)+2^(n-3)・・・+2^1}
     = 2^n - (2-n) - (2^n-2)
     = n
D = n/(2^n)

おお。Dがきれいに求まった。

さて、初めにnは正の整数と決めた。従ってD > 0  (Q.E.D)

ということでまとめると、どんな正の整数nにたいしても以下が成り立つ。


D > 0  
すなわち
男の子の期待値 − 女の子の期待値 > 0


だから、すべての夫婦が男の子を産むまで子作りした場合、性比は常に男の子に偏る。